「プロンプトのコツ」を検索すると、断片的なテクニックがたくさん出てきます。ですが仕事で毎日AIを使う立場からすると、必要なのは個別のコツよりも、いつでも使い回せる「型」です。型を10個くらい手元に持っておけば、毎回ゼロから言葉を考えなくて済みます。
この記事では、実務で繰り返し使っているプロンプトの型を10個、サンプルとセットで紹介します。同じくらい大事なので、その型を使うべきでない場面も併記します。型は便利ですが、万能ではありません。
先に結論です。 プロンプトの上達で一番効くのは、「賢い言い回し」を探すことではなく、目的に応じた型を先に選び、その型のテンプレートに当てはめることです。型を決めてから書けば、毎回の試行錯誤が減ります。
なぜ「型」から考えるべきなのか
プロンプトを書くとき、多くの人はいきなり文章で頼み事を書き始めます。それでも動きますが、毎回言葉選びに時間がかかり、出力の質も安定しません。先に「これは要約型か、比較型か、分解型か」を決めてから書くと、必要な情報をどこまで渡すべきかが自動的に決まります。型は、頼み方の設計図です。
もう一つの利点は、チームで使い回せることです。個人の感覚に依存した「うまいプロンプト」は共有しづらいですが、「比較型はこう書く」という型であれば、他の人もそのまま流用できます。
型を選ぶ前に確認する2つの質問
どの型を使うか迷ったら、次の2つを自分に聞いてみてください。
- 今欲しいのは「情報の整理」か「新しい発想」か — 整理が目的なら要約・変換・チェックリスト化型、発想が目的なら分解・レッドチーム・ロールプレイ型が向く
- 出力の形式は決まっているか — 決まっているならフォーマット固定型や制約型で縛り、決まっていないなら段階的深掘り型でまず方向を確認する
この2つの質問だけで、10個の型のうち候補は3〜4個まで絞れます。残りは実際に試して、出てきた結果が思っていたものと違えば、次の型に切り替えれば十分です。型選びに正解を求めすぎず、まず動かしてみる姿勢の方が、結果的に早く目的地に着きます。
仕事で使える型10選
1. 要約型 — 長い情報を短くする
議事録、記事、長いメールのやり取りなど、情報量が多いものを短くまとめたいときに使います。ポイントは、「何のために要約するか」を書くことです。目的が違えば、残す情報も変わります。
例:「以下の議事録を、参加できなかった上司への報告用に、決定事項と次のアクションだけ3行で要約してください」
使うべきでない場面:原文のニュアンスや発言者の意図が重要な場合。要約は情報を削る作業なので、微妙な言い回しの判断が必要な場面には向きません。
2. 変換型 — 形式を変える
箇条書きを表に、口語のメモを丁寧な文章に、といった形式変換に使います。内容そのものを考えさせるのではなく、既にある情報の見せ方だけを変えるので、出力が安定しやすい型です。
例:「以下の箇条書きのメモを、項目・担当者・期限の3列を持つ表に変換してください」
使うべきでない場面:元の情報自体が不足している場合。変換型は「ある情報の並び替え」なので、情報を新たに作らせたいなら別の型を使います。
3. ロールプレイ型 — 視点を変えて見てもらう
自分では気づきにくい視点をもらうときに使います。「顧客の立場で」「新人の立場で」と役割を指定すると、同じ文章でも指摘の観点が変わります。
例:「あなたはこの提案書を初めて読む顧客担当者です。分かりにくい箇所、不安になる表現を指摘してください」
使うべきでない場面:専門的な正確性が必要な指摘。役割設定は視点を変える効果はありますが、専門知識の正しさを保証するものではありません。
4. 比較型 — 選択肢を並べる
複数の選択肢を検討するときに、比較の軸を指定して並べてもらいます。軸を自分で決めずに「比較してください」だけ頼むと、軸がぶれた表になりがちです。
例:「AとBの案を、コスト・実装期間・社内での定着しやすさの3軸で比較表にしてください」
使うべきでない場面:比較のための料金や仕様の事実情報が未確認の場合。断定的な比較表を先に出すと、そのまま社内で事実として広まってしまいます。
5. 分解型 — 大きな作業をステップに割る
やることが大きすぎて手が止まっているときに使います。全体を一気に頼まず、「まず分解してから、1つずつ頼む」という2段階にするのがコツです。
例:「新サービスの案内ページを作る作業を、着手できる粒度のステップに分解してください。まだ本文は書かないでください」
使うべきでない場面:作業の全体像が既に明確な場合。分解自体が目的化して、余計な工程が増えることがあります。
6. レッドチーム型 — 自分の主張の弱点を突かせる
提案や企画を出す前に、反論役を頼みます。自分に都合の良い意見だけで固めてしまうのを防ぐ型です。
例:「この企画案に反対する立場で、成立しなさそうな理由を3つ挙げてください。指摘は遠慮しないでください」
使うべきでない場面:すでに社内で十分に議論され、意思決定が固まっている段階。今さら弱点を並べても、意思決定を混乱させるだけになります。
7. 制約型 — 条件を先に固定する
文字数、トーン、使ってはいけない言葉などを先に指定してから本文を作らせます。後から条件を追加すると、全体を書き直す手間が増えるので、最初に固定するのが効率的です。
例:「400字以内、である調ではなくです・ます調、『絶対』『必ず』のような断定表現は使わずに、お詫びメールの文面を作ってください」
使うべきでない場面:条件が多すぎて、逆に不自然な文章になる場合。制約は3〜4個までに絞った方が、質の高い出力になります。
8. フォーマット固定型 — 出力の形を毎回同じにする
定型的に繰り返す作業では、見出しや項目名まで指定したテンプレートを渡すと、毎回同じ形式で出力が返ってきます。週報や日報のような定期業務に向いています。
例:「以下のメモから、『今週の実績』『課題』『来週の予定』の見出しで週報を作成してください。見出し名は変えないでください」
使うべきでない場面:そもそも決まった形式がない、探索的な作業。フォーマットを先に固定すると、発想の幅を狭めてしまいます。
9. 段階的深掘り型 — 概要から詳細へ進む
最初から詳細を全部頼むと、的外れな方向に長文が返ってくることがあります。まず概要だけ出させて、方向を確認してから深掘りを頼む方が、手戻りが少なくなります。
例:「まず見出し構成だけ提案してください。本文はまだ書かないでください」→ 確認後「2番目の見出しについて、具体例を含めて詳しく書いてください」
使うべきでない場面:時間が限られていて、多少の手戻りより速さを優先したい場合。段階を踏む分、往復の回数は増えます。
10. チェックリスト化型 — 作業を確認項目に変える
手順やルールをそのまま文章で残すより、チェックリストに変換した方が、実務では使われやすくなります。既存の手順書やメモをチェックリスト化するのに向いています。
例:「以下の作業手順を、抜け漏れを確認できるチェックリスト形式に変換してください。手順の順番は変えないでください」
使うべきでない場面:判断が必要な工程が多い作業。チェックリストは「やったかどうか」を確認する形式なので、状況ごとに判断が変わる作業には向きません。
型を組み合わせるときの考え方
実務では、1つの型だけで完結することは少なく、複数を順番に組み合わせます。例えば、分解型で作業をステップに割り、各ステップを段階的深掘り型で進め、最後に要約型で報告用にまとめる、といった流れです。
組み合わせるときのコツは、1回のプロンプトに複数の型を混ぜないことです。「要約しつつ比較しつつ提案もして」と一度に頼むと、どの観点も浅くなります。型は1つずつ、順番に通す方が結果が安定します。
具体例として、社内向けの企画書を作る流れを挙げます。まず分解型で「企画書に必要な要素」を洗い出し、段階的深掘り型で見出し構成だけを先に固めます。構成が固まったら各見出しを制約型(文字数・トーンを指定)で書かせ、最後にレッドチーム型で「この企画に反対する立場」からの弱点を出させて、事前に潰しておきます。型を分けて通すことで、どの段階で何を判断したかが自分でも追いやすくなります。
まだできないこと/やらないこと
型を使えば質は安定しますが、限界も明示しておきます。
- 型に当てはめても、事実確認が必要な内容の正確性は保証されない
- 専門性が高い判断(法務・医療・会計など)を、型だけで代替しようとしない
- 社外に出す文章は、型で作った下書きであっても人間の最終確認を挟む
- 「これさえ覚えれば全部うまくいく」万能プロンプトは存在しないと考える
関連する仕事道具(参考)
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まとめ
プロンプトの上達に必要なのは、奇抜な言い回しではなく、目的に応じた型を先に選ぶ習慣です。要約・変換・ロールプレイ・比較・分解・レッドチーム・制約・フォーマット固定・段階的深掘り・チェックリスト化。この10個を手元に置き、まず「今回はどの型か」を考えるところから始めてみてください。すべてを一度に覚える必要はなく、自分の業務で繰り返し出てくる作業から、2〜3個を選んで試すだけで十分に効果を感じられるはずです。
※ 各AIサービスの機能や仕様、利用できるモデルは変動します。業務で使う際は、出力内容を必ず人間が確認してください。

